2020.7.1
エンタープライズiOS関係者に視聴をお勧めするWWDC2020セッション3選
2020年6月22日から5日間、WWDC2020が開催されました。
初日のキーノートでは、iOS(iPadOS) はもちろんのこと、macOS, tvOS, watchOS など全OSが大きく変化することが紹介されたほか、Apple Silicon や Air Pors などハード面にも話が及び、Appleの転換点にふさわしい非常に濃密なカンファレンスとなりました。
一般消費者向けの機能紹介がメインとなるのは例年のWWDCと変わらずでしたが、今年もエンタープライズ向け機能をしっかりと進化させてきました。iOS/iPadOSだけでなく、MDMやABM(Apple Business Manager)などの関連サービスや仕組みにも変化があるのがポイントです。
本稿では、関係者にお勧めしたいWWDC2020のセッションを3つ紹介します。
1. Custom app distribution with Apple Business Manager
企業向けのアプリ開発者や、企業内でアプリ活用を考えている情シス担当者の方は必見。今後、企業向けアプリの開発・配布で主流となる Custom App と Apple Business Manager(以下、ABM)について丁寧に説明してくれるセッションです。
Custom App と ABM と MDM がどのように連携するのか、全体を概観できます。
ABM や Custom App を巧く使いこなせるかどうかは、その繋がりを意識できているかどうかにかかっています。アプリの開発の仕方やプロジェクトの進め方にも影響を与えるでしょう。ABMやMDMを触ったことがない方はまず入門的位置づけの動画として見られると良いと思います。
なお、ADEP(Apple Developer Enterprise Program)はもう取得することができないと諦めたほうが良い理由の投稿でも言及しましたが、これからは企業内アプリはADEPではないと考えたほうが良いでしょう。超レアケースの一部例外を除き、本セッションで紹介されている Custom App + Apple Business Manager + MDM が今後の企業向けアプリ開発・配布の基本方針となります。
2. What’s new in managing Apple devices
iOS端末の配布やアプリの配信(つまりデプロイメント)に関連する新機能を紹介するセッションです。
今回macOSがかなりiOSに近づきました。が、見た目だけではなく管理系の機能もiOSにかなり寄せてきました。iOSと同様の管理がmacOSでもできるようになってきた感じです。前半はそんなmacOSの集中管理の新機能について。
iOS/iPadOSについては動画の後半となります。
全てが語られている訳ではありませんが、iOSもまたエンタープライズ向けでしっかりと進化していることが分かります。幾つもありますが筆者が注目した2点をご紹介します。
1つ目は、iOS端末の配布に際し初期設定プロセスを更に短くできるという新仕様。
従来から MDM + ABM + DEP(Device Enrollment Program) の組み合わせで Zero-touch deployment (初回電源ONで企業用端末の設定が自動で終わる機能) を実現できていましたが、実のところiOSではゼロではなく5,6回はタップが必要でした。
今回、それらのうち幾つかをなくせるようになります。MDM側の対応も必須となりますが、この機能を使えば大量のiOS端末を導入する際に初期設定時間を短くすることができるはずです。
そしてもう一つ。Shared iPad 機能の強化です。
iPadには、端末を共有して使用する Shared iPad という機能があります。Apple School Manager(ASM) と連携して使うもので一部の教育機関で使われています。この Shared iPad が今年の春からABMでも設定できるようになりました。つまりビジネス用途でも Shared iPad が使えると。
ただ Shared iPad を使うにはユーザとしてABMアカウントが必要でした。が、今回テンポラリのユーザ使用が認められるようになるようです。macOSのゲストログインのような感覚でしょう。店頭での利用などiPad利活用の可能性が広がりそうな気がしますね。
他にも幾つもの新機能が紹介されており、iOSがエンタープライズ向けにも着実に進化していることがよく分かる動画になっています。20分のセッションの後半10分程度で概観できますので、是非見てみて下さい。
3. Leverage enterprise identity and authentication
Apple Business Manager と Microsoft AzureAD 連携についての解説と新機能紹介です。
iOS登場初期の企業向け利用では、全従業員のメールアドレスでAppleIDを作成する…なんてことをやっていました(その作業を代行する業者もいた)。
現時点でAppleは、Managed AppleID という業務用途のAppleIDとも言うべき特別な仕組みを用意しています。その受け皿にもなっているのが Apple Business Manager。
2019年に Microsoft AzureAD と連携できるようになりましたが、本セッションはその解説となります。
そして今回、新機能としてSCIMというものが紹介されました。System for Cross-domain Identity Management の略称で、AzureADのユーザ情報変更を Apple Business Manager に反映できるというものです。(従来は例えばAzureADのユーザ削除はABMには自動反映されないなど完全な連携ではなかった)
2年連続でAzureAD連携を強化してきたことからも、iOSがエンタープライズ用途を重要視していることが分かりますね。エンタープライズiOS関係者は今後、ABMの理解はもちろんのこと、AzureADの理解も必須となっていくでしょう。
以上、必見の3セッションを紹介しましたが、全体からすればほんの一部で、これら以外にもエンタープライズ向けセッションは沢山用意されています。
WWDC2020のEnterprise, IT, and appsページにエンタープライズ関連セッション一覧がありますので、興味のあるものを見ておくと良いかも知れません。