2021.4.12
カスタムApp(CustomApp)とは何か(6) 〜審査期間と審査難易度について〜
社内専用業務アプリを開発するとなれば、2019年頃まではADEPを契約しInHouseアプリとして作ることが定石でした。その理由の一つにAppleの審査がないことがあげられます。
対して、カスタムApp(CustomApp)とは何か(2) 〜ABMとの関係と申請方法について〜で紹介した通りカスタムAppの申請ではAppleの審査があります。新たにADEPを契約するのが難しくなって、ADEP未契約企業が非公開の業務用アプリを開発するにはカスタムAppを使うほかない今、カスタムAppの審査がどのようなものか知っておくことは重要です。
本稿では、AppStore公開アプリの審査に関わった事のあるアプリ関連企業や開発者の方向けに、カスタムAppの審査について紹介します。要点を先に書くと、
- カスタムAppの審査は公開アプリの審査と同じ
- カスタムAppの審査はリジェクトされにくい(ように思える)
です。以下に、弊社での実例とともにご紹介します。
カスタムAppの審査期間は?
申請から1日〜3日と考えて問題ありません。AppStore公開アプリと感覚的には一緒です。業務用アプリなので審査に時間がかかる…とかそういうことはありません。
参考までに弊社の実例をご紹介します。以下は、ある業務アプリの初期バージョンの審査記録。MDMと連携することを前提に弊社用意のサーバとRestAPIで通信し、一部ローカルネットワークの別端末とTCP/IP通信するような業務アプリです。
審査待ちから審査okとなるまで丸2日もかかってないことが分かります。そして以下は本アプリ5回目のアップデート申請時の審査記録。
AppStoreの公開アプリに関わったことがある方は「あぁ確かにほぼ変わらないね」という感想を持って貰えると思います。お客様のカスタムApp開発・申請を御支援させて頂くこともありますが、やはり同様です。初めての申請で24時間待たず審査通過する激速ケースもあります。これも公開アプリと同様ですね。
カスタムAppの審査難易度は?
カスタムAppの審査は、公開アプリと同様に App Store Review ガイドライン に沿ってレビューされます。
AppleのABM(Apple Business Manager)のオフィシャルドキュメントにも以下の記載があります。
Appの審査:カスタム配付のために送信される各カスタムAppおよび各アップデートバージョンには、AppleによるApp審査プロセスが実行されます。App Store Appと同じApp ReviewガイドラインがカスタムAppに適用されます。
同じ基準である以上、やはり基本的な違反は普通にrejectされますので App Store Review ガイドライン に改めて目を通しておくことをお勧めします。
起動直後に落ちるとかボタンがあるのに機能しないなどアプリとして致命的な不具合が残っていたり、推奨されないAPIを使用しているとか、Webサイトを閲覧するだけのアプリとか、Appleのロゴや製品名をアプリ内で無断で使っているとか、基本的な違反はやはりリジェクトです。
なお(2008年以降100個以上のアプリを申請に関わってきた)弊社感覚ですが、カスタムAppの審査では、公開アプリで時折ある理不尽さを感じることが余りないような気がします。恐らく公開アプリでリジェクト問題に悩まされがちな、課金・広告・著作権・個人情報収集といった要素が業務系アプリにはそもそも含まれにくいからかも知れません。
公開アプリでは、Webサイトをラップしただけのアプリでリジェクト(Guideline 4.2 最低限の機能の違反)されることもよくありますが、エンタープライズiOSでは通常 MDM 経由で Webクリップ による擬似的アプリ配布が可能なので、このリジェクト問題に困ることも余りありません。
近年(2019年以降)Appleは業務用アプリをカスタムAppにするよう推奨しています。
かつての定石であるADEPの契約申し込み画面からカスタムAppに誘導していますし(参考)、AppStore公開アプリで申請したときにアプリの用途や想定ユーザを尋ねられ「それならカスタムAppにして下さい」と誘導される場合もあります。そのような背景もあるため、基本を抑えていれば余程のことが無い限りカスタムAppのリジェクトで悩まされることはないと思います。
以上、カスタムAppの審査について紹介しました。カスタムAppの審査を過度に恐れず、カスタムAppを積極的に活用してみて下さい。