2021.6.14

エンタープライズiOS関係者に視聴をお勧めするWWDC2021セッション3選

2021年6月7日から5日間、WWDC2021が開催されました。


(昨年に引き続き今年もオンラインで開催された)

初日のキーノートでは、iOS15/iPadOS15を中心にAppleの全OSでの新機能が数多く紹介されました。昨年と違って今年は、個人向けの iCloud+ や開発者向けの Xcode Cloud など、クラウド関連の新しい方向性も示されました。


(エンタープライズ関係者にはメールでWWDCのセッション案内が届いた)

もちろんエンタープライズ向けの新機能も発表されました。キーノートに続く数々のセッションで詳細を見ることができますが、本稿では中でもお勧めのセッション3つを紹介したいと思います。

 

1. What’s new in managing Apple devices


(10130 What’s new in managing Apple devices)

他のエンタープライズiOS関連セッションの概要紹介のほか、iOS15/iPadOS15での機能強化を幾つか紹介してくれるセッション。後半は主にmacOSに関する内容ですので、前半だけ見ておくと良いでしょう。

紹介されていた追加機能で最も興味深かったのは RequiredApp と呼ばれる新機能。

MDMからアプリがインストールされる時、監視モードでなければ「インストールしますか?」という確認ダイアログが出るということを過去の投稿で紹介しました。(参考 : iOSの監視モードとは何か)


(iOSの監視モードとは何かより。監視モードでない場合はこの確認画面が出る)

この画面でユーザに拒否されると管理側は困る場合があります。かといって監視モードにもできない事情があるし困った…となるようなケースを RequiredApp は解決してくれます。

RequiredApp は、MDM側で指定したアプリ1つに限って、監視モードでない端末に確認ダイアログなしのインストールが可能になる機能です。

MDMと連動するようなエージェントアプリ(監理支援アプリ)を必ず入れておきたいケースや、施設設置用途に限定されたiOS端末などで便利に使える機能になる筈です。

その他、情報漏えいを防ぐ Managed Clipboard や、iPadを共用する Shared iPad での新たな制限機能など幾つかエンタープライズ向け機能が紹介されています。全てのエンタープライズiOS関係者が見ておくと良いセッションです。

 

2. Meet declarative device management


(10131 Meet declarative device management)

iOS15/iPadOS15ではMDMが大きく進化します。セッション中に強調されているキーワードは Autonmous (自律的) と Declarative (宣言的) の2つ。


(端末がiPad端末である場合に発動する設定定義への参照を定めるJSON)

Declarative Device Management では、こうあるべきというiOS設定の「宣言」をMDMからiOS端末にあらかじめ流しこんでおき、iOS端末側が自分の状態と比較して「自律的」に設定を適用してくれるようになります。

MDMが常に端末の状態を収集し正しく設定されているかどうかを監視する従来のアーキテクチャから、あるべき設定を流し込んで後はiOS端末側に任せて状態変更時にはそれをMDMに伝えるという端末主体のアーキテクチャに変わります。

MDMのパラダイムシフトと言っても過言ではありません。MDMベンダーはかなり大がかりな対応作業が必要になるでしょう。大変さをアプリ開発の世界で例えるなら、UIがフラット化したiOS6→iOS7アップデートの惨状に相当するでしょうか。(iOS6,7時代を経験した関係者は大変さが共感頂けるでしょう)

Declarative Device Management への対応可否がMDMサービスの淘汰を進めるかも知れません。ただ対応したMDMでは管理オペレーションが随分楽になるのは間違いありませんので、自社で使用しているMDMがいつ Declarative Device Management 対応するのかベンダーからの発表に注目しておきましょう。

 

3. Manage software updates in your organization


(10129 Manage software updates in your organization)

基本macOS向けの話ですが、エンタープライズiOSの関係者は16:00から17:30の1分半だけ見ておきましょう。iOSバージョンアップの新しいオプション設定について紹介があります。

エンタープライズiOS現場あるあるの、

「新しいメジャーバージョンにはUPさせたくないが、現状のメジャーバージョンでは最新版まではUPさせたい」

といったポリシーの運用が可能になります。具体的には来年iOS16系がリリースされた時に、iOS16系へのアップデートは控えたいがiOS15最新版(iOS15.5とか)にだけは上げれるようにしておきたい…という運用ができるようになるということですね。

実はこれ、あらゆるOSの業務利用で発生する要件です。iOS15がこの問題に対応するということで、エンタープライズ現場に寄り添うAppleのこれまで通りのスタンスを感じれる発表だったと思います。

 

以上、WWDC2021で筆者が筆者が注目したエンタープライズ関連セッションを紹介しました。全部を紹介することはできませんので、興味のある方は WWDC2021 Videos のページからセッション検索をして見てみて下さい。


(WWDC2021の全セッションを検索できる。enterprise や manage 等で検索すると関連セッションを探せる)

iOS/iPadOSだけでなく、macOS の業務利用にも関係する開発者やSIerは特に、本記事で紹介した3つ以外も関連セッションもチェックしておくことをお勧めします。

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