2022.4.18
そろそろADEP契約更新ができなくなるかも知れない 〜カスタムAppへの移行を急ぐべき理由〜
(最終更新日 : 2022/10/3)
その時が迫っているのかも知れません。
上図はあるADEP契約企業の ADEPの契約更新が拒否され期限切を迎えてしまった様子です。あるInHouseアプリを業務で常用している企業で、突然ADEP更新を拒否されこの状況になってしまいました。
Software associated with this membership will continue to run for the next XX days.
とあり、あとXX日で InHouse アプリが起動できなくなると警告されています。(XXには具体的な数字が入り毎日1ずつ減っていく)
以前の投稿でも紹介した通り、ADEP契約が切れると期限日から91日目以降はInHouseアプリが動かなくなります。企業によっては最悪の場合、業務が停止しかねない事態ですね。これを避けるには期限日から90日以内に原則カスタムAppに移行しなければなりません。
意図してADEP契約更新を止めて期限日を迎えているのなら良いのですが、例年通り更新しようと思って拒否されてしまった場合は困った事態になります。
そこで本稿では、そうした状況に備えられるようにするため、実際にADEPを拒否された事例とそうでない事例を紹介するとともにADEP更新契約の2022年における実態とその対策について解説します。
全ADEP契約企業が置かれている状況のおさらい
審査もなく、配布端末数の制限もない。ADEPによるInHouseアプリは、業務用アプリとしてこれ以上ないほど使い勝手がよく都合の良い配布形式でした。
ただ、ADEPはもう取得することができないと諦めたほうが良い理由の投稿で解説した通り、2020年頃から新規のADEP契約締結は事実上不可能となっていました。加えて、既存の契約済み企業もいつ契約更新不可となるか分からないという状況にあったのです。
新規契約は実質不可になっても、ADEP契約済み企業は更新はできていたわけです。まだまだ InHouse アプリは使い続けられる。そう思って多くの企業が更新し続けてきたのが2020年、2021年でした。
が、2022年1月末にAppleが動きます。非表示App(Unlisted App) という新しい仕組みを発表したのです。詳細は非表示App(Unlisted App)とは何かの投稿で紹介した通りですが、この非表示App(Unlisted App)はある意味、Appleが自らADEPにとどめを刺す最後の一手でした。
詳細は別の投稿に譲りますが、非表示App(Unlisted App)の登場によって「ABMとMDMの契約は現実的ではない、だからADEPが必要なんだ」という、ADEPとInHouseを正当化する唯一の理屈が封じられたのです。Apple は「それならADPで非表示App(Unlisted App)にしなさい。ADEPはいらないよね」と言えるようになりました。
- 原則、業務アプリもADPでAppStoreに申請
- 非公開にしたいならカスタムApp
- MDMやABMの都合でカスタムAppが無理なら非表示App
- テスト用ならAdHocかTestFligth
これがAppleの結論です。非表示App の仕組みが発表された直後に、冒頭で紹介したようなADEP更新を拒否される事例が出てきたのは偶然ではないでしょう。
もう、Apple にADEPが必要だと言えなくなりました。2010年からエンタープライズiOSの世界にいる筆者も、ADEPを正当化する理屈を組み立てるのは完全に不可能であると断言できます。Apple は本気でADEPを潰そうとしていると感じます。(自分で作ったのに!)
ADEP契約更新が拒否される条件
冒頭で紹介した例のように更新拒否される条件は不明です。Appleから公式な発表はありません。ただ、弊社が得ている事例情報では
- Appleに審査されると不都合な実装をしているアプリだが毎日業務で使っている
- ADEPの契約から5年以上経過しており例年何の問題もなく更新してきた
というInHouse利用常態化&ミッションクリティカルなケースでさえ、明確な理由の提示なく契約拒否されてしまっています。ADEP公式ページの対象条件を満たした企業であってもです。
ただ全てのADEP契約の更新が2022年から不可になったというわけではなく、
- iDEP(ADEPの前身)の契約条件が緩和された時期に契約できていたアプリ開発会社
- 業務用アプリというよりも単に社内のテスト用ビルドの配布手段として便利だから使用中
といった緩い利用状況の企業が更新できたという例も情報として届いています。中にはADEP公式ページの対象条件を満たしていない企業の例すらあります。
本来なら、前者が更新できて後者が不可であるべきでしょう。なぜそうなっていないのか理由は分かりません。ただハッキリしているのは、InHouseアプリが使えなくなれば業務停止しかねない企業であっても、問答無用にADEP更新を拒否される事例が現れてきているということです。
ADEP契約更新はどのように拒否されるのか
通常、ADEPの契約期日の30日前には以下のようなメールが届きます。
そして developer.apple.com にADEPアカウントでサインインすると以下のように表示されます。
ここで Renew Membership ボタンをクリックするとクレジットカードによる決済に案内され、支払いができれば更新完了、例年ならただそれだけのことです。ADP(Apple Developer Program)を契約している方には、金額は違えど馴染みのあるフローでしょう。
しかし、ADEP契約更新時に以下のようなフォームが現れる場合が出始めました。
なぜ InHouse が必要なのか、誰が管理してるのか、どのように配布しているのか、等々ですね。ADEPはもう取得することができないと諦めたほうが良い理由の投稿でも紹介した、BundleID内の自己申告項目にも似ています。
必要事項を入力して submit した後、Apple からADEP更新審査の回答が来ます。拒否されれば、前述の通り以下のような画面となりADEP更新の道が完全に閉ざされます。
警告文の末尾には、
Learn how to transition to the Apple Developer Program
というリンクが貼られていて、以下のページに誘導されます。
InHouseいらないよね?カスタムAppに移りましょう…と、取りうる手段や必要なものを解説してくれます。
ADEP契約更新が拒否される兆候?
ADEPの契約更新が認められる場合と拒否される場合とで、明らかな相違点があります。それはAppleからADEP更新に関して届くメール。
以下は、拒否された企業に宛てられた、契約期日の90日前のメールです。内容は先に紹介したApple Developer Programへの切り替えの内容とほぼ同じです。
一方、更新が認められた企業には、例年通り契約期日の30日前に以下のようなメールが届いています。
Renew Now と更新を促すリンク付き。例年はこの形式なのです。90日も前にメールが届くことはまず無かったことです。
このように例年とは違う内容で、且つ、かなり早いタイミング(90日前)でADEPの更新に関するメールがAppleから届いた場合、ADEPの更新可否がひょっとしたらひょっとするかも?と警戒しても良いかも知れません。
全ADEP契約企業にお勧めしたいこと
ADEP契約更新は、余程の理由がない限りいずれ拒否される時がくると考えましょう。Appleのここ2,3年の動きを総括すると、ADEPをもはや過去のものにしようとしている、以外の結論は導けないからです。
全てのADEP契約企業におかれては、InHouse アプリが使えなくなる前提で開発体制や配布・運用体制を見直すことをお勧めします。もし諸事情ですぐに動けないのなら、最低でもADEPの契約期日を確認し、その90日前に上記で紹介したメールが Account Holder 宛に届いていないか確認するぐらいはしても良いでしょう。
もしメールが届けば、カスタムApp化に動く時かも知れません。メール受信からADEP期限到来までは90日。そして、更新拒否されればADEP期限切れ後から90日間のみInHouseアプリを起動可能です。
つまり、上記で紹介したメールが届いた直後にすぐ動けば、最大で180日間の準備期間を持てるということです。
早いにこしたことはありません。
期限日直前にいざ申請してみたら拒否された…なんて展開を想像してみて下さい。90日強でカスタムApp化と配信とテスト、運用切替まで滞りなく進めるのは難しいでしょう。InHouseで業務アプリを開発・運用してきた多くの方にとって、ADPでアプリをAppStore申請することすら初めてだったりすることも多いからです。
前述した通り更新が可能な時もありますが、その場合は先手を打てて良かったと解釈しましょう。いずれカスタムApp化はやらなくてはならないのですから。ADEPが廃止され InHouse アプリを使えなくなるのは時間の問題です。
以上、ADEPの契約更新拒否について解説しました。個人的にはInHouseな業務アプリがあるなら、今すぐカスタムApp化することを強くお勧めします。
(追記) その後、半年経過したADEP契約更新状況について以下にまとめました。
併せてご覧下さい。