2022.10.31

複数の端末に同じAppleIDを使ってアプリをインストールすることの是非

同じAppleIDを複数の端末に設定して業務用アプリを展開することは問題ないのでしょうか。

時折、聞かれる質問ですので、本稿でその是非の根拠となる情報を紹介します。最初に弊社の見解を書くと、同じAppleIDが設定された複数の業務端末がある場合、

  • 同じ従業員が使うのは問題ない
  • 異なる従業員が各端末を専属的に使用する場合は規約違反に近いグレーで非推奨

です。つまり、1人1台配布している複数台の業務端末に同じAppleIDを設定してアプリを使う事は推奨されない、ということですね。色々企業様毎に諸事情がありますから余り積極的に非推奨を強調して案内することはないのですが、これを一応の弊社見解としています。

以下、詳しく見ていきます。

 

AppStoreアプリはApple メディアサービス利用規約に従う

Appleのサイトには利用規約やライセンス契約等の契約書面を集約したポータルサイト Apple Legal があります。ご覧になったことはあるでしょうか?


(Appleの製品やサービスの契約書や規約が集約されている)

AppStoreのアプリに関する契約は、このページから [インターネットサービス] をクリックした先にあります。


App Store について規定されているのは [Appleメディアサービス] ですので、リンクをクリックします。ここでようやく規約がhtmlで表示されます。


(PDFと違って見易い。スマホでも十分に閲覧できる)

自動的に日本用のAppleメディアサービス利用規約が表示される筈ですが、もし他国のものが表示される場合は、画面上部にある「国/地域を選択して下さい」をクリックして日本を選択しましょう。


(AppStoreは世界で1つではなく国の数だけある。当然、規約も国の数だけある)

この規約を読めば、本稿の問い「複数の端末に同じAppleIDを使ってアプリをインストールしても良いのか?」が分かる筈です。InHouse・AdHoc・TestFligthのいずれでもないアプリ配布形態を採るなら、開発会社もエンドユーザ企業も目を通しておくべき文書です。

 

複数端末にAppleIDを設定することは問題ない

この規約の「本サービスと本コンテンツのルール」という項目に以下の記載があります。

本サービスと本コンテンツを利用するには、本セクション (以下「利用ルール」という) に明記されている規則に従う必要があります。

規則には従って下さいということですね。「本セクション」には、細かくコンテンツの種類ごとに定められた規則と、コンテンツの種類によらない共通規則とが並びます。共通規則は「全てのサービス」というサブ項目に記載されており、AppleIDについて以下のように述べています。

いかなる本サービスについても、最大 10 台までのデバイス (ただし、コンピュータは最大 5 台まで) でご自分の Apple ID で同時にサインインすることができます。

最大10台までと上限が決まっているようです。これは現実に AppleID を複数端末に設定して利用している方はご存知かも知れません。規約にも明記されているのですね。

 

アプリをインストールできる端末の定義

共通規則に続くのは「App Store コンテンツ」のサブ項目。実はここに、業務用途での考え方がしっかりと書いてあります。以下に全て引用します。

営利事業、政府機関、教育機関 (以下「エンタープライズ」という) を代理して業務を行う個人は、(i) エンタープライズが所有または管理する 1 台または複数のデバイスで 1 名の個人が使用する目的で、または (ii) エンタープライズが所有または管理する 1 台の共有デバイスで複数人が使用する目的で Arcade 以外の App をダウンロードし、同期できます。明確にするために記すと、複数のユーザが連続して、または集団で使用する各デバイスには、別個の使用許諾が必要です。

業務用に AppStore アプリを使う場合、インストールが許容される場合は限定されてそうです。文章中の (i)と(ii) に限られ、それらに該当しないなら規約違反と考えるのが妥当でしょう。

(i)は、「1名」という点が強調されています。1名の従業員が、会社支給端末の複数台端末で使う為にAppStoreアプリをインストールするのは問題無さそうです。これは、個人が iPhone, iPad を2台持ちしている場合に同じAppleIDを設定して使うことに相当します。

(ii)は、「1台」という点が強調されています。これは1台のデバイスにインストールされたアプリを複数人で使うような、いわゆる設置型端末のアプリのことを指していると解釈できます。飲食店でPOSレジ端末として使われるiPad等が当てはまるでしょう。

以上の2点が、業務用途で許容される App Store アプリのインストール形態となります。

では、冒頭の質問、

「複数の端末に同じAppleIDを使ってアプリをインストールしても良いのか?」

の問いに対する解はどうなるでしょうか。

同じAppleIDを使って同じ1人の人が使うなら、(i)に該当しますから問題なさそうです。(ii)は端末の共有利用時のことを書いていますから、今回の問いとは関係がありません。

よって(i)に該当しないパターンである、

  • 支給した複数の業務端末に同じAppleIDを設定し
  • 各端末を個別の従業員専用端末として支給しAppStoreアプリを使用させる

という使い方は、規約で許容される AppStore アプリの使い方ではないと考えることができそうです。

 

以上、アプリ利用に関する規約と弊社見解を紹介しました。あくまで弊社見解ですので、実際にiOS端末やアプリを業務用途に使う場合は、法務部門に確認を取った上で実運用ポリシーを定めて下さい。

なお、ABM(Apple Business Manager)とMDMを介して法人用に一括ライセンス購入(VPP)する場合は事情が異なってきます。ABMを使えば、AppleID を必要とせずにデバイスそのものに紐付ける「管理対象ライセンス」という特別なライセンスでAppStoreアプリ(非公開のカスタムAppを含む)が供与されるからですね。


(ABMでAppStore公開アプリを一括購入しようとする様子。ABMの利用規約が別途ある)

ABMを使う場合のライセンスの考え方については、機会あればまた改めて投稿しようと思います。

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