2023.1.23

MDMではInHouseアプリだけでなくAdHocアプリも配布できる

AdHocアプリの配布方法は大きく以下の2種類があります。

  • Apple Configuratorを使う
  • OTAを使う

前者についてはApple Configurator とはの投稿を、後者についてはOTAとは何かの投稿をそれぞれ参考にして下さい。AdHocアプリはこのどちらかで配布することが多いと思いますが、実はMDMでも配布できることは余り知られていません。

本稿では、MDMを使ったAdHocアプリ配布について紹介します。

 

MDMにAdHocな .ipaファイルも登録できる

MDMに .ipa ファイルを登録して端末へ配布する、この文脈では通常 ADEPによるInHouseアプリを想定していることが多いです。業務用アプリといえば、ADEPでの InHouse な .ipa であることが大半だからですね。

しかし、MDMに登録される .ipa ファイルは、InHouse だろうが AdHoc だろうが中身に本質的な違いはなく、あると言えば Provisioning Profile 内の記述が一部異なる…ぐらいの差しかありません。(どう異なるかはまた別の投稿に記します)

MDMプロトコルのドキュメントにもその差を問題にしている記述は見当たらず、MDMサービスが .ipa ファイルの種類を識別する理由は特にありません。そういうわけで、MDM サービスによっては InHouse アプリと同じように AdHoc アプリの .ipa ファイルも登録できる場合があります。


(弊社がよく使うMDM BizMobile Go!のアプリ登録画面。InHouseを前提としているがAdHocの.ipaファイルも登録ができる)

.ipa ファイルを登録できればこっちのもの。InHouseと同様に、AdHocアプリをMDMで管理し配布することができるようになります。

 

AdHocなアプリをMDM配布できると何が嬉しいか

ADEPの契約ができている(更新できている)企業に、AdHocを使うメリットはありません。100台の台数制限が必要で、事前にUDIDを取得する必要があるAdHocをわざわざ使う理由はないからです。せっかくADEP契約があるのですから、台数無制限に配布可能なInHouseを使ったほうが良いです。

では、AdHocはどのような企業にメリットがあるのでしょうか。

1つには、ADEPからADPへの移行を余儀なくされたMDM利用企業です。MDMを使ってInHouseアプリを配布していた筈ですから、代わりにADPのAdHocを使うことで従来の運用を継続できます。

  • (1) ADPで配布用証明書を取得し、AdHoc 用の Provisioning Profile を作成する
  • (2) 当該 Provisioning Profile を使って署名する (従来のInHouseの代わりに)
  • (3) (2)でできた.ipaファイルを、これまで通りMDMに登録し配信する

このように、署名時の Provisioning Profile (と対応する証明書・秘密鍵)を差し替えるだけで、従来と同じワークフローで運用できるわけです。


(ADEPの更新が拒否され期限切れした時の画面。こうなっても総悲観はまだ早い…かも知れない)

また更に、ADPで初めて Developer Program を契約する企業で業務用アプリを非公開かつ無審査で配布したい場合にも有用です。

現在ADP契約下でのアプリ配布では通常、AppStoreインフラを使う公開アプリ・非表示アプリ・非公開アプリ(カスタムApp)とすることを目指しますが AppStore を使う以上は Apple の審査を受ける必要があります。

しかし後述する制限が許容できるなら、AdHoc を使うことで Apple の審査を迂回できます。この際に、 MDM を使用すれば業務用アプリを遠隔で無審査に配布できますので非常に便利です。

このように、AdHocはADP契約を保有する企業にとって Apple の審査回避手段として機能します。

 

AdHocなアプリの注意点

何の制限もなければ、それはADEPのInHouseと同義になってしまいます。無論、AdHocがInHouseの完璧な代替になるはずもなく、以下の制限と制約があります。

  • アプリ動作可能端末は100台まで
  • UDIDを事前に登録する必要がある
  • 用途は限られないが、配布可能対象は限られる
  • AdHoc用の Provisioning Profile は1年に1回更新の必要がある

この条件に収まりうる業務用アプリなら、Appleの審査は不要でMDMから自由に配布ができるというわけです。3番目の項目については以下の投稿を参考にして下さい。

また4番目の項目については、 以下情報が参考になりますので併せてご覧下さい。

Provisioning Profile の更新は InHouse も AdHoc も仕組みが一緒であり、InHouseがそうであるようにAdHocもロジックに変化が無いなら毎年ビルド・署名する必要はありません。MDMから単体でAdHoc用の Provisioning Profile を配布するだけでokです。

 

以上、AdHocをMDMで配布することについて紹介しました。Apple Configurator や OTA に加え第三の選択肢として、AdHoc + MDM での非公開アプリ運用も是非検討してみて下さい。

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