2023.5.22
実録!ADEPの更新を拒否されるまでの全て (2)
前回の投稿で、AppleからADEP期限90日前にメールが届いたこと、絶対更新不可だと確信していたこと、reject される体験のために直前の3日前に申請したところまで書きました。
今回はその続き。
実際にどのように申請を行ったのかを紹介します。申請時に Apple に聞かれることとその回答内容も全て掲載しますので、ADEP更新を控えている企業におかれては参考にして貰えると思います。順に見ていきましょう。
更新の申請
更新の申請手続きは、ADEPの画面で「詳細情報を提供」をクリックするとこから。前回の投稿でも書きましたが、Account Holder 権限を持つ AppleID でサインインしておく必要があります。
ADEP更新申請では結構な数の質問に回答する必要がありますので、事前準備をお勧めします。いざ申請という時に、必要な回答を社内からまとめられずADEP期限が終了してしまうと目も当てられません。
項目数はざっと20数個。全て英語です。簡単なアンケート形式かな?と軽く(甘く)見ていてはいけません。詳細な記述を求められる箇所も少なくなく、英語の読解と作文が必要です。
大きな企業であればあるほど、事実確認や情報収集、社内や関連会社や委託先等の連携・調整、作文やその英訳等々の時間を要する筈ですので、90日前のメールが届いた時点で即座に動くのが賢明です。
申請入力中に焦らないための準備
事前に社内で回答集を作成することをお勧めします。本稿を参考に、ExcelやSpreadSheetに質問を書き出し、それを関係者に回覧して全て埋めてから挑みましょう。
なお入力する項目20数個は、以下のように4つの区分に分かれます。
- Your Organization (組織)
- App Development & Distribution (アプリ開発と配布)
- Code Sharing and Security (コードの共有とセキュリティ)
- App Testing (アプリのテスト)
それぞれが1ページに対応しています。
各ページでの入力や修正に時間をかけていると、次ページに進もうとした時にエラー画面が表示されることがあります。ログインセッションが切れるためですね。
エラーが表示されたから reject される…というわけではありません。慌てずに ADEPの Developer サイトにサインインし直して「詳細情報を提供」をもう一度クリックしてみて下さい。途中まで入力した内容は覚えてくれています。
準備ができたらいざ申請です。
Page1 : Your Organization
最初に自社情報を提供します。Account Holoder の情報から自動入力されている項目が多いので、1ページ目は楽です。順に見ていきましょう。
Which best describes your entity? (貴社は以下のいずれに該当しますか?)
企業であれば Organization 一択です。Government entity (政府機関) や Educational institution (教育機関) の選択肢もありますが変える必要はありません。弊社も当然変えずに申請しました。
Is this the correct name of your organization? (貴社名は以下で正しいですか?)
Is this the correct URL for your organization’s website? (貴社のウェブサイトは以下で正しいですか?)
Is this your correct email address? (貴方のメールアドレスは以下で正しいですか?)
いずれも通常はYesの筈です。異なる場合は No を選択して正しい名称を入力します。弊社では全てYesのままとしました。
Are you an employee of the organization? (あなはこの組織の従業員ですか?)
Do you have the authority to accept legal agreements on behalf of your organization? (あなたは組織を代表して法的契約を受諾する権限を有していますか?)
いずれも通常はYesでしょう。そもそも Yes にできない人がこの画面を操作していることが誤りです。なぜなら、ADEP契約時には本質問にYesと回答できる人であることが求められていた筈だからです。正直にNoと答えるか、気にせずYesと答えるか、はたまた、Account Holder に紐づく AppleID を本質問にYesと答えられる人に変更してからにするか、自社事情に合わせて選んで下さい。
How many employees does your organization have? (あなたの組織の従業員は何人ですか?)
従業員数です。弊社は100人に満たない企業ですので正直に1-99を選択しました。ADEPの要件を満たせませんから、弊社の場合はもうこの時点で reject フラグが立った筈です。
余程の特異事情がない限り、DUNS番号から従業員数は分かりますので正直に書きましょう。DUNS番号を管理するD&B社は、DUNS番号から各種情報を調べられる D&B Hoovers や、社内システムと連動できるAPI等も提供しています。Apple もこれを使っていると考えるのが順当です。
Briefly describe your organization’s primary industry. (あなたの組織の主な事業を手短に説明して下さい)
事業についての説明を書きます。弊社は、「Consulting related to Enterprise iOS App dev and deployment」と書きました。
Does your organization have more than one membership in the Apple Developer Enterprise Program? (あなたの組織は複数のADEPを契約していますか?)
通常はNoの筈です。もし複数のADEP(iDEP)契約をしているならYesにします。Yesを選ぶとテキスト入力欄が現れますので全ADEP契約の TeamID を列挙して下さい。TeamID は下図の通り Developer のサイト上で確認することができます。
以上で1ページ目の入力は完了です。[Next]ボタンをクリックして次へ進みます。
Page2 : App Development & Distribution
このページではアプリ開発や配布について7つの質問に回答する必要があります。英文で記述する箇所が2つあり少々面倒です。順に見ていきましょう。
Tell us about an app you’ve developed or distributed through the program that’s been used for at least 6 months. Describe the app’s purpose and functionality, and how frequently it’s used. Include the bundle identifier. (ADEPを使って開発・配布され最低6ヶ月間使用されているアプリについて、そのアプリの目的や機能や使用頻度を、BundleIDも併せて記述して下さい)
使用しているInHouseアプリについて詳しく記述します。BundleID (AppID) も併せて書きましょう。BundleID が分からない場合は、アプリ開発を担当した企業や開発者に確認して下さい。また業務用端末にインストールされているアプリのBundleIDを調べる方法の投稿を参考に調べても良いでしょう。
このテキスト欄は1000文字程度しか入力できませんのでアプリが多い場合はなるべく全てのBundleIDを列挙し、それぞれを端的に述べます。弊社の場合は直近で長らく使用しているアプリについて詳しく書きました。
Who builds your in-house apps? (誰がInHouseアプリをビルドしますか?)
Employees か Contractors か Both の3択です。自社ではビルドせず、外注先から .ipa ファイルのみを納品して貰っているような場合は Contractors を選びます。弊社は Employees を選択しました。
How many employees are on your internal app development team? (社内アプリ開発チームにいる従業員は何人ですか?)
1-29, 30-59, 60以上の3択。弊社は1-29です。
How many enterprise apps have you built or are you currently building? (過去にビルドした、または今ビルドしている業務用アプリは幾つありますか?)
1-9, 10-19, 20-29, 30以上の4択。弊社はそれほど数が無かったので 1-9 です。
Who are your app’s users? (貴社のアプリの利用者は誰ですか?)
上図の通り5つの選択肢から複数選択します。1つ目、2つ目が大半でしょう。
4つ目の General public は完全にアウトですね。これを選択すれば ADEP の規約違反ですので確実に reject されると考えて良いでしょう。厳しい言葉をあえて書きますが、もし読者がこの4つ目の選択肢に該当する InHouse アプリの配信企業であったりその受託開発企業であるなら、貴社のようなコンプライアンス意識の欠如が ADEP を廃止に向かわせた可能性があることを是非考えて貰いたいと思います。(参考 → ADEPはもう取得することができないと諦めたほうが良い理由)
3つ目の Employees of your franchise も基本的に規約違反で reject 対象となりますが、自動車業界やホテル業界のアプリ、POSレジアプリ関係の場合は例外的に認められています。いずれにしても本質問も正直に回答しましょう。4つの選択肢に該当しない利用者がいる場合は、5つ目の Other を選択して具体的に記述します。
Describe in detail how you distribute your apps to users. (利用者にアプリをどのように配布しているか詳細を記述して下さい)
配布方法を記述します。MDMを使っている場合が大半と思われますが、使っていない場合は特に詳細を書きましょう。OTA配布なら、Basic認証をかけているとか、VPN必須にしているとか、独自の認証機構を設けているとか、セキュリティに配慮している事実があればアピールポイントとして併記しておくべきです。
To how many devices does your organization distribute apps using this program? (ADEPを使って社内配布している対象デバイスはどの程度ありますか?)
1-99, 100-999, 1000-9999, 10000-99999, 100000以上の5択です。該当するものを選びます。弊社は 1-99 を選択しました。
以上で2ページ目までの入力が終わりました。ここで折り返し地点です。長くなってきましたので、3,4ページ目の内容は次の投稿で紹介します。